ルカによる福音書 5章1~節11 「網をおろして」農村伝道神学校3年 後藤田 由紀夫 神学生
群衆に取り囲まれるように、イエスキリストは現われる。そして日常生活の中のシモンたちに声をかける。「沖へ漕ぎだし、あなたたちの網を降ろして漁をしなさい」。シモンは漁師のプロ。お言葉ですが、と切り返すも、イエスに引き入れられていく。イエスの言葉は、シモンと、シモンの廻りの関係性を示す複数形の言葉に変わり、そこから場面が急展開していく。シモンは仲間と共に舟をこぎ出し、網を下ろす作業に変わる。魚を捕らえる網は人と人をつなぐネットワーク構築の関係性を示し、二そう目の舟に応援を求め「働き手」の輪が広がっていく。転じて、シモンと仲間が、イエスの弟子としてネットワークを構築していく担い手に変えられていく。岸辺の群衆は、福音を伝えるシモンとその仲間が群衆の中に入っていく事を暗示している。
今日の聖書の箇書は場面の展開が目まぐるしい。時代の変化が加速化している21世紀の私たちに似ていないか?
私は、20年以上の両親の介護経験からも、特に「網をおろして」の部分に強く惹かれる。
1.「網をおろして」は、湖面で網は広がっていく 2004年、老人ホーム入居の前日、デイ・サービスから帰宅した父が失踪した。私は仕事から帰宅後、自宅付近の町田市街を捜索したが見つからず、翌朝、町田署に捜索願いを提出。捜索エリアが拡大され、三日後に三浦半島の城ケ島入口で、無事保護され、ネットワークの網を広げる意味を思い知らされる。
2.「網を下ろしてみなさい」の動詞はギリシャ語原文では、複数形が使われている。シモンの廻りの関係性を示す言葉ともとれる。 父の死後、母の自宅介護について「奥さんも限界に来ています。介護は、自分達で背負いきるのは、無理ですよ、早くお母さんを老人ホームに入れなさい。それが、お母さんと奥さんを解放することになるのです」と警告をいただいた。その助言を受けて、父と同じ老人ホームに入居、昨年末に生涯を閉じるまで。自分の力に頼る解決から他者との関係性から生まれた解決であった。
9節、シモンと仲間は大量の魚に驚いた。これは主から出た恵みの大きさを表している。結果として、生かされて生きる生き方に変えられた。だから主を恐れたのである。
さて、2000年から始まったコロナショックによって、「ソ―シャルディスタンス」の状況下になった。教会では手紙、電話、ライブ配信等の工夫しながら現在まで至っている。私たちは、孤立を強いられているように見えるが、キリストにつながれていくことに気付く。私たちの「網」ネットワークは「6節おびただしい魚がかかり、網が破れそうになった。」ではなく、緊急事態宣言で「網が張り裂けた」というギリシャ語原文に近い状況を経験することになったのではないか?
私たちは、「ソ―シャルディスタンス」のところにいるけれども、「心の距離」を縮め、主を恐れつつ、主エスの「網をおろして」の御言葉によって、主につながれていく網にとらえられ、歩んでいこうではないか。
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