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2022年2月 6日 (日)

マタイによる福音書 20章1~16節 「こんな世界観もある」

 今日の聖書のテーマは、「同一労働同一賃金」とは全く別ののあり方を示します。ぶどう園の主人が朝6時に11デナリオンの約束で労働者を雇い、その後9時、12時、3時、5時にもそれぞれ人を雇った。仕事が終わると全員に1デナリオンずつ払ったという有名な話です。おそらく最も頑強な人から雇われていき、一日中仕事を待ち続け、最後に雇われた人は弱々しく、あるいは高齢だったのかもしれません。この人たちにも生活に必要な額が支払われる。それが神の国なのです。

 井出英策という経済学者がベーシックサービスということを提案しています。消費税を増やしてでも財源を税に置くことにより、ベーシックサービスとして、教育・医療・介護などを全て無償化できるとの考えです。命や暮らしにダイレクトに関わるサービスを全ての人に無償で提供して、生活を保障し、将来の不安を取り除く。その代わりしっかりと税金を取る。貧しい人も含め、みんなで負担を分かち合う。貯蓄ゼロでも不安ゼロ、弱者を助ける社会から弱者を生まない社会に変える。これがベーシックサービスの考え方です。財源については、多額の税収をもたらす消費税を中心に、多様な税の組み合わせを考えるべきだと言います。

 たとえば、三種類の年収の人を例に挙げます。Aさんが年収200万、Bさんが年収600万、Cさんが年収1000万とします。このままだと年収の格差は、Aさんを1とするとBさんは3倍、Cさんは5倍となります。全員に25パーセントの税金をかけると、それぞれ50万、150万、250万で、税収は450万になります。これを現金ではなくサービスとして150万円ずつ均等に配るという提案です。そうするとAさんは150150300万、Bさんは600万、Cさんは900万となり、格差は、それぞれ2倍、3倍となります。住民にとって必要なものは住民みんなで負担しあい、全ての住民に給付するという構想です。貧しい層も税を負担し、富裕層もサービスで給付を受ける。Bさんは、いわゆる中流層で圧倒的多数です。このBさんがCさん側に立ってAさんへの給付に不満を持つ今の制度と違って、Bさんが不満を持たずにAさん側に立つことができれば、世界は変えていける。そしてベーシックサービス政策なら、それが可能だと。

 このように主張する井出英策の理解の方向性は、ぶどう園主人のたとえで語られている主イエスの示す世界観を現代的な世界観に転じてく可能性として読み取ることもできるのではないでしょうか。

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