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2007年12月

2007年12月 9日 (日)

ルカ1:46-56「マリアの賛歌」

ルカによる福音書の降誕物語を読んでいくと、まずマリアの天使によって告げられる神の言葉に対して「お言葉通り、この身に成りますように」と自らを開いていく態度と同時に、神の意志がこの世において貫徹されることを積極的に述べます。すなわち、「主はその腕で力を振るい、/思い上がる者を打ち散らし、権力ある者をその座から引き降ろし、/身分の低い者を高く上げ、飢えた人を良い物で満たし、/富める者を空腹のまま追い返されます(51-53節)」と。  この「マリアの賛歌」によって歌われているのが一体どのような方であるのかを前もって述べています。  わたしたちは、今年も飼い葉桶の幼子の誕生を喜びながら待つことを学んでいます。  イエス・キリストにおいて神の思いが徹頭徹尾実現されます。それはゲッセマネの祈りから十字架に至る従順は次の言葉によって示されています。 「イエスは大声で叫ばれた。『父よ、わたしの霊を御手にゆだねます。』こう言って息を引き取られた」(23:46)と。  さらにまた、積極的な姿勢としては、罪の赦しの宣言や癒しの業において示されますが、明快なのは「平地の説教」のエッセンスにおいてです。イエスは「幸い」という祝福を「貧しい人々」「今飢えている人々」「今泣いている人々」に向かって与えました。「極貧者」「今、飢餓状態にある人々」「今、悲しみに号泣する人々」に対してです。  この人々の生命がいかなる状態であろうとも、その一つひとつの生命は、あるがままにおいてすでに付加価値なしに祝福されてしまっている、この祝福によって、その悲惨さを乗り越えていくべき課題として捉え、決してあきらめず希望をもって生きていく道筋が確実にあるのだと示されたのです。  この方の言葉の真実さは、すでに「マリアの賛歌」において先取られて語られています。  無防備な姿で磔られる主イエスは、誕生においても無防備な姿で飼い葉桶に寝かされているのです。この無防備な主イエスの姿に救い主を見ることができる幸いこそが、わたしたちの信仰なのです。

2007年12月 2日 (日)

イザヤ11:6-10「狼は子羊と共に宿り」

イザヤは、紀元前8世紀半ばに活躍した南王国ユダの預言者です。すでに王国は北王国イスラエルと南王国ユダに分裂していました。  北王国イスラエルは紀元前722年にアッシリアによって滅ぼされるのですが、その脅威が東から迫りつつある時代の発言と想定したい。滅ぼされる前の段階で北王国イスラエルはシリヤと共にアッシリアに逆らうために同盟を結び、これに南王国ユダにも加わるように求めていました。この求めは軍事的な圧力によってなされました。これは「シリア・エフライム戦争」と呼ばれます。そこでユダのアハズ王は、怯えと怖れに満たされたのでしょう。アッシリアの側につくべきか、シリアや北王国イスラエルの側につくべきか、と動揺します。  イザヤは、王に直接ものを言うことができたことからして貴族出身だったのでしょう。彼は、語ります。そもそも、どちらの側につくか、などという発想自体を認めるな、と。軍事によって解決を図ろうとする発想自体を否定するのです。「落ち着いて、静かにしていなさい。恐れることはない」(イザヤ書7:4)と。そして、軍事が破綻することを語るのです。「主は国々の争いを裁き、多くの民を戒められる。彼らは剣を打ち直して鋤とし、槍を打ち直して鎌とする。国は国に向かって剣を上げず、もはや戦うことを学ばない。ヤコブの家よ、主の光の中を歩もう」(2:4)、と。そこにこそ、神のまことの平和であるシャーロームが実現するのだし、そこにこそ「神我らと共にいます―インマヌエル」があるというのです。  軍事に依り頼まない世界観を神への全幅の信頼において描いたのが、今日の聖書、11章6‐10です。神が歴史を確実に支配されるので、やがて必ず救い主が到来する、根元から切り倒された木の切り株から新しい芽が生えて来る。ダビデ・ソロモンの統一王国がなぎ倒されてから久しいので希望を見出すことは困難でしょう。しかし、その方はやって来られる。「ダビデの家系」とせず「エッサイの株」と呼ぶのは、ダビデへの礼賛ではなく、批判的な意味があるのかもしれません。つまり、やがて来るべき方においては、ダビデのような上から下への支配の徹底ではなくて、へりくだりと柔和である仕方の徹底がなされると信じられていました。3~4節には「主を畏れ敬う霊に満たされる。目に見えるところによって裁きを行なわず、耳にするところによって弁護することはない。弱い人のために正当な裁きを行ない、この地の貧しい人を公平に弁護する」とあります。この実現が11:6‐10に描かれる世界観であり、キリストの誕生を指差すものです。

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